「ミドリムシが地球を救う」というビジョンのもと栄養問題に取り組む東大発バイオテクノロジー企業株式会社ユーグレナ代表取締役社長の出雲充さん。
世界で初めて微細藻類ミドリムシ(学名:ユーグレナ)の屋外大量培養に成功、2014年12月には東証一部に上場と活躍を続けています。
今回は前回の海外インターンシップ編に引き続き、そんな出雲さんの情報の捉え方やリーダーシップ観を伺いました。
?[海外インターンシップ編はこちら:http://voice.aiesec.jp/archives/4620]

質問に熱く回答くださる出雲さん
話を聞いてすぐに「これだ!」と思った。――ミドリムシとの出会い――
――バングラデシュでの海外インターンシップを経て「栄養失調」の問題を解決しようと活動されていく中でミドリムシと出会われたんですよね。 最初に「ミドリムシ」という案を聞いたときはどう思われましたか?
話を聞いて5分で「これは、ミドリムシだな」と思いました。
ミドリムシ(学名:ユーグレナ)はワカメや昆布と同じ藻の一種で、植物です。
ところが、植物であるにも関わらず動くんですね。
植物と動物の能力がどちらも一緒になっているんです。
人間は生活していく上で植物性・動物性の栄養素が必要です。
ミドリムシの中にはこの動物性・植物性の栄養素が59種類含まれています。
植物と動物の両方の栄養素を一度に摂ることが出来るんですね。
「ああ、なるほどね」と思いました。
59種類の色々な食べ物を作ってお届けするのは難しいですが、ミドリムシ一種類で栄養問題を解決出来る可能性があるのであれば、こんなにいいアプローチはないなと確信しました。

ユーグレナで取り扱っている食品の数々[※写真は「石垣産ユーグレナ(ミドリムシ)公式通販ユーグレナ・ファーム」(http://www.euglena-farm.jp/)のスクリーンショットです]
二次情報ではあまり意味がない
――出雲さんは、偏見なく物事を見られているなと感じます。
例えば、バングラデシュで毎日出るカレーを見ても「貧困でも食べ物はあってよかった」で終わってしまい栄養問題に気がつかない人もいると思います。
あるいは、ミドリムシと聞いて理科の教科書の図を連想し抵抗感を抱いてしまう人もいるのではないでしょうか。
それに対し、出雲さんは柔軟に、そしてフラットに物事を捉えてらっしゃるなと感じるのですが、情報と触れ合うときや物事を見るときに意識されていることはありますか?
何も考えていないのかもしれませんね。
――感性や感覚、ということでしょうか?
いえいえ、感性や感覚という言葉だと感性が鋭い人が素晴らしくて鈍い人は鈍感でセンスが無いという話になってしまうじゃありませんか。
そんなことを言ったら私なんて本当に鈍感だと思いますし、特別にセンスが優れていると言うわけでもありません。
そんな難しいことではないんですよ。
自分が知らないものは、知らないですよね。
今はインターネットで簡単に情報だけは手に入りますから、知っていることは増えてきました。
人の話や人の情報といったいわゆる「二次情報」が簡単に手に入るようになりましたよね。
でも、やはり「一次情報」といわれる、自分が直接接した情報の方がはるかに大切です。
自分が直接体験したこと、その直接得た情報には非常に価値があります。
そうではないものにはあまり意味が無いですよね。
――簡単に情報が手に入るからこそ、周りの情報ではなく自分で体験したことが大切なんですね。
私じゃなくて、ミドリムシが凄いんです!
――出雲さんご自身は色々なインタビューや著書の中で「自分は生まれつきのリーダーではない」とおっしゃっていますよね。
でも、ミドリムシを広めていく活動は、色々な人や力が出雲さんを中心に引き寄せられて来て回っているように思います。
その引き寄せる・中心人物として動く力は、何でしょうか?
私が凄いのではなくて、ミドリムシの特徴が凄いので
「よし、一つやってみましょう」と色々な人が助け、サポートしてくださるんです。
これはまさにミドリムシの実力ですね。
ですから、誰がリーダーをやっても変わらないんですよ。
リーダーシップの形は変わってきた
「リーダーシップ」は日本において変化してきたと思います。
私はいつもマンガでこのリーダーシップの変化を説明しています。
私が小さいときは人気のあるマンガと言えばドラゴンボールでした。
今はワンピースですよね。
リーダーシップの変化も、この違いと同じです。
ドラゴンボールは主人公の孫悟空が修行をして強くなり、敵を倒す。
更に修行をして更に強い敵を倒す。その繰り返しです。
一方、ワンピースでは主人公で船長のルフィは泳げないんです。
海賊の船長が泳げないとは、普通に考えたらおかしいですよね。
その上、彼よりも料理がうまい人もいれば、彼は海図も読めない、武器の扱いも得意ではない。
スキルや能力でみると彼は最もリーダー・船長から遠い主人公ですね。
でも、その彼が船長としての冒険に多くの人が共感し感動しています。
それは、船長であるリーダーの果たすべき役割が1989年バブル崩壊以降日本のリーダーが変わったのと同じだと思うんです。
逆三角形の一番下を支える。それがリーダー
昔は、会社は社長が一番偉くて強い、社長を頂点としたピラミッド型な組織でした。
ユーグレナ社はこれを180度逆にした形なんです。
社長が一番下にくる逆三角形です。

リーダーの役割と組織の形は変わってきた
下だから偉くない、上だから偉いというわけではなく、それぞれの個性や能力を持った人が最前線で大活躍しています。
会社には上手くいくときも、上手くいかないときもあります。
そしてリーダーの大事な仕事は上手くいっていない時に不安にならないことなんです。
だから、下なんです。
下の軸がブレなければ多少のことがあっても三角形は倒れません。
今、その逆三角形の一番下を支えるリーダーに求められている事こそ「一貫性」なんです。
「他人の話を聞かないでください」――学生へのメッセージ――
――最後に、これから海外に行こうとしている、あるいは社会問題に取り組もうと考えている大学生にメッセージをお願いします!
海外に出てみたい、社会問題・課題を解決するために取り組んでみたいという志を持っている方にまずお願いしたいことがあります。
それは、「他人の話に耳を傾け過ぎないでください」。
素直でまじめな人ほど色んな人に話を聞きに行きますよね。
当然応援してくれる人もいれば、反対する人もいます。
例えば「海外に行くのは危ないからやめたほうがいいですよ」「海外に行かなくても、日本にも社会問題は沢山あるのだから日本でできることをやりなさい」と言ってくる人もいるわけです。
色んな見方、考え方がありますからね。
だから、若いうちにあまり人の話に惑わされたり悩んだりするのは、はっきり言って時間の無駄です。
もう少し考え方の軸ができてくると、色々な必要なものとそうではないものを取捨選択出来るようになります。
そこで初めて先人の意見や本に学ぶことに大きな価値が生まれます。
若いときは効率的な時間の使い方なんて考えていることが勿体無いですよ。
はるかに重要なのは量、ボリュームです。
とにかく思いついたことは全部やる。何でもやる。
「これって大丈夫かな、どうかな」と考えている時間が一番もったいないです。
自分の興味がわいたもの、関心あるなと思ったものにはそれがどんなものであってもまず動く。
そして、動いてみて上手くいかなかったときに初めて人の話を聞きに行く。
この順番の方がとても大切だと思います。
<プロフィール> 出雲 充[いずも みつる]さん 東京大学農学部卒。大学時代に参加したアイセックの海外インターンシップで栄養失調の問題に関心を持ち、微細藻類ミドリムシ(学名:ユーグレナ)の研究を始める。 2005年8月株式会社ユーグレナを創業、同社代表取締役社長 同年12月ミドリムシの食用屋外大量培養に世界で初めて成功。 信念は『ミドリムシが地球を救う』。 著書に『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。』(ダイヤモンド社)がある。 株式会社ユーグレナwebサイト:http://www.euglena.jp/
▼出雲充さんインタビュー#1 海外インターンシップについてはこちらから▼ 『「ミドリムシが地球を救う」きっかけは、海外インターンシップ』 ▼インタビュー動画はこちらから▼ 『海外インターン体験談|アジア バングラデシュ | 株式会社ユーグレナ 代表取締役社長 | 出雲充氏 | 学生団体 NPO法人アイセック・ジャパン』
▼2016年度アイセック入会についてはこちらから▼ http://recruit2016.aiesec.jp/event/
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